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執筆者の写真love965

講演会『「慰安婦」問題を知り、今の社会を考える〜女性の人権問題や半島情勢をふまえて〜』報告

更新日:2020年6月9日


キボタネは、若者が日本軍「慰安婦」問題に関わる講演会や展示会、映画鑑賞会などの企画をする場合に、必要な費用を助成する事業もおこなっています。 このたび、初の助成対象として福岡の「青年社会フォーラム」が選ばれ、6月30日に講演会が開催されました。主催団体の報告を以下に掲載します。

去る6月30日、福岡の西南学院大学で開催いたしました講演会におきましては、天候が優れない中、学生参加者を含む約40名の参加者にお集まりいただきました。本稿ではそのご報告をさせていただきます。

セクハラ被害の告発とその撲滅を訴える#MeToo運動が世界的な盛り上がりを見せる中、日本でも性暴力やハラスメントを受けた被害女性たちが声を上げ始めています。一方で名乗り出た被害者がバッシングにさらされるなど、彼女たちの声を受け入れようとしない風潮が今の日本社会に蔓延し、運動の広がりに欠けているのも事実です。加えて、またずさんな公文書の問題や、責任の所在が曖昧な社会体質など、現代の日本社会の抱えている課題はさまざまですが、それらの多くはこの「慰安婦」制度の内包する問題でもあるのです。今回の企画では、過去の一ページとしてではなく、現代まで続くものとしてこの「慰安婦」問題を捉える視点を得るために、梁澄子氏(希望のたね基金代表理事)より解決に向けた市民運動の歴史から現在までを自身の体験を交えて語っていただきました。また会の後半では、福岡で活動している私たち青年社会フォーラムより国際交流などこれまでの取組について報告を行いました。

梁澄子氏はキボタネの若者ツアーの紹介を皮切りに、韓国における「慰安婦」問題の運動の始まりから挺身隊問題対策協議会が成立し、平和の碑建立までの経緯と、その歴史に関わったさまざまな人物の紹介、また昨今の政治的な情勢までを時系列にそって話されました。

「慰安婦」問題の研究はユン・ジョンオク氏のたった一人の調査活動から始まりました。その研究がイ・ヒョジェ氏(韓国女性学の大家)の助けを得て、またキーセン観光への批判的関心の高まりという社会情勢のもと開催されたシンポジウムの場で、各国の女性活動家から多くの賛同を集めました。その後、調査チームが結成され、韓国挺身隊問題対策協議会の設立へと繋がっていきます。

日本政府に対して真相究明のための公開書簡を送るも、大使館は「証拠がないから認められない」と取り合いませんでした。そんな状況の中、挺対協の人々の前に現われたのが最初の証言者である金学順さんでした。記者会見や、裁判の場で臆することなく顔を出し証言する金学順氏の姿が報道を通して全世界を駆け巡り、次々と元「慰安婦」だったという名乗り出が続いていきました。各地で、戦時中の被害の後遺症や記憶に苦しみつつ孤独な戦いを続けていた人々の点が線になり面になり、ようやく社会化しました。

誰も信じられず、社会の暴力に苛まれ、孤独に戦ってきた宋神道さんは自らのことを「あかぬけたババアになった」と評しました。ハルモニたちは自らの問題を社会化し、人権活動家となり、その姿は性暴力に苦しむ世界各地の人々から尊敬のまなざしを集めています。そこに至るまでには、支援団体の人々との信頼関係の醸成の中でハルモニ達の心の変化がありました。この変化というのはこの運動を語る上で欠かすことはできません。また、被害者たちの被害回復に大きく貢献したのは日本の人々でした。90年代初め、被害国以上に加害国である日本で証言を聞こうという試みが多くなされ、被害回復の場となったという歴史の一面がありました。

韓国政府から支援金がでており、挺対協が身辺の世話をしているハルモニの中には、お金はいらないということでいろいろなところに寄付をしている方がいます。彼女達は、運動の中で自分たちのような被害にあっている人が今でもこの世界にいるということを知り、ナビ基金を設立、コンゴやベトナムにさまざまな方面で支援を始め、現在も続けています。ベトナムの問題に関しては政府を批判し、被害者支援の活動も行っています。

そのように被害回復をし、人権活動家として羽ばたき始めたハルモニ達にとって日韓合意は当人の頭越しに行われる不当なものでした。市民においても怒りが爆発し、平和の碑を守るための小屋が作られ、女子学生を中心に氷点下の気温のなか泊まりこんでおり、それは今でも続いています。このことからも如何に日韓合意が納得のいかないものだったのかということが分かります。まずは加害国によるきちんとした事実認定がなされなければ、謝罪が成立するはずもないのです。金福童さんは日韓合意について「歴史を売った」と批判しています。解決とは、解決案が被害当事者に受け入れられたところから、再発防止などの取り組みが始まっていくべきものなので、「これで終わり」というものではありません。

梁澄子氏は、日韓合意は一方的に日本への批判の口を封じ、「慰安婦」問題を忘れさせようとするものに他ならず、被害者の方の完全な被害回復と、再発防止のためにもこの問題を「記憶し、運動を継承」することが大切であると述べて1時間半以上に渡る講演を締めくくりました。

青年社会フォーラムからは、団体の概要と活動経緯を報告させていただきました。若者が集い、自由に意見交換をしていくための場づくりとしてスタートした団体です。定期的な活動として、月に一度の頻度でメンバーのもちよりでテーマを決め議論を行っております。また国際交流にも力をいれており、過去には韓国で開かれた「歴史と平和に関する国際NGO大会」に日本の代表として参加し、当団体代表の浅香勇貴が分科会の場で発表を行いました。また、今年もフィリピンで開かれる同イベントに参加する予定であり、「慰安婦」問題に関するパネルディスカッションにメンバーが参加いたします。

希望のたね基金の「若者企画への支援」という事業により実現した今回の講演会ですが、人数こそ少なかったものの、いただいたアンケートや直接いただいたご意見では非常に好評であり次回以降の開催を望む声も多くありました。

今後は福岡圏の大学教授の方々との連携を深めながら学生への間口を広め、またワークショップ形式など参加型の企画なども取り入れることで、この福岡の地で私たち若者が中心となりさまざまな世代が一体となってこの問題に取り組んでいくその下地を作っていければと考えております。


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