2022年7月19日(火)
講師:イ・ハヨンさん(性売買問題解決のための全国連帯共同代表)
担当:村田
7月19日、性売買問題解決のための全国連帯共同代表のイ・ハヨンさんをお招きし、韓国の性売買問題解決のための法改正運動についてお話を聞きました。
韓国では1990年代まで性売買は女性の道徳の問題、社会の性道徳の問題であると考えられ、性を買う行為については問題視していませんでした。性売買は女性への人権侵害だという考えには及んでいなかったそうです。
2000年と2002年、韓国・群山で2つの火災事件が発生しました。2つの火災合わせて20名の人が亡くなりました。この2つの事件の共通点は、火災が起きた場所が性売買営業所であったこと、そして亡くなった人のほとんどがそこに従事していた女性であったことでした。
この2回の火事で、性売買営業所に従事していた女性たちは人身売買され、業者が様々な理由で借金を増やし、女性が性売買から抜け出せない状況を作っていたことが明らかになりました。さらに、女性たちは業者側に監禁されていたのです。部屋の窓には鉄格子がはめられていたり、監禁されていた部屋は内側から鍵が開けられないようになっていました。
これに対し、女性運動活動家らが立ち上がります。この2回の火災で多くの女性が亡くなったことは国家の責任であると主張しました。当時国は、「淪落行為等防止法」によって性売買女性を問題視し処罰する一方で、性を購買する側の男性や女性に性売買を強要、監禁した業者側を処罰せず放置していたからです。2000年の火災事件をきっかけに、性売買は女性に対する搾取であり抑圧であるという観点を共有し、2002年以降は性売買処罰法改正運動を中心に運動がすすんでいきます。
そして2004年に、性売買処罰法と被害者保護法の2つからなる性売買防止法が制定されます。この法律では、性売買斡旋業者と購買者への処罰を強化し、性売買女性を性搾取の被害者であるという概念から法的保護や支援を受けることができるようにしました。しかし性売買に関するコントロールタワーの不在や、性売買=女性への暴力という観点、そしてデジタル技術の発展などによる性売買現場の変化に対応していくためにも、より強力な反性売買政策が必要であると主張します。
講座の後の質疑応答では、数多くの質問が飛び交い、時間が足りないほどでした。参加者の皆さんも、日本の性売買の現状と比較しながら聞きたいことがたくさんあったのではないかと思います。
イ・ハヨンさんは、韓国の性売買は日本の影響を大きく受けていると言います。日本の植民地期を経て、現在の韓国の性売買の方式が作られました。公娼制や日本軍「慰安婦」問題。日本の植民地支配によって女性の尊厳、人権、身体はひどく傷つけられ、そして現在も性売買というかたちで続いています。私たちはその責任を知り、そのどのように解決へと導いていくのか考えるべきではないでしょうか。(村田)
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